国際ホロコースト記念日に「東洋のシンドラー」何鳳山氏を追悼
第二次世界大戦中の1938年から1940年にかけ、当時ナチス・ドイツに迫害されていたユダヤ人に数千人分のビザを発給した中華民国(台湾)の外交官がいた。在ウィーン中華民国総領事館(オーストリア)の総領事で、「東洋のシンドラー」と呼ばれる故・何鳳山氏である。イスラエル駐台北経済文化弁事処(台湾におけるイスラエル大使館に相当)と徳国在台協会(台湾におけるドイツ大使館に相当)は25日、台湾北部・台北市の国家図書館で開催した「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー(通称「国際ホロコースト記念日」)」のイベントで、ナチスによる大量虐殺とその犠牲者を追悼すると共に、故・何鳳山氏の勇気ある行動を称えた。イスラエル駐台北経済文化弁事処が台湾で「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」のイベントを開催するのは3回目のこと。
イベントでは外交部(日本の外務省に相当)が制作したドキュメンタリー映画『東方辛徳勒-何鳳山(=東洋のシンドラー 何鳳山)』が上映された。このドキュメンタリー映画は、在ウィーン中華民国総領事館の何鳳山総領事が1938年から1940年にかけ、オーストリアに住むユダヤ人に数千人分にも及ぶ「命のビザ」を発給した史実を描いたもの。ビザの発給を受けたユダヤ人たちは、ナチスの迫害を避け、中国大陸・上海へ逃げた。イスラエル科学技術省で首席科学者(Chief Scientist)を務めていたDaniel Weihs教授の父親も、故・何鳳山氏からビザの発給を受けたユダヤ人の一人。
イベントに出席した蔡英文総統は、「アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所からドナウ川沿いにある記念館や博物館を訪れると、台湾から遥か遠く離れた場所の出来事のようにも思いがちだが、そこで語られていることは我々の認識と同じだということが分かる。つまり、人権、自由、正義という普遍的価値を守るのは、全人類に課せられた共同責任だということだ」、「台湾は今後も国際社会と共に努力し、この責任が忘れ去られたり、わい曲されたりしないようにしたい。この2年間、台湾では国家人権博物館の設立準備が進められてきた。開館後はイスラエル、ドイツ、それに欧州の各機構と交流を深め、次世代の人権教育の強化に尽くしたい」と抱負を語った。
イスラエル駐台北経済文化弁事処のAsher Yarden代表(大使に相当)は、「今年は特別に、実際の行動をもって政府の政策に反発し、上司の命令に背き、独自の判断で多くのユダヤ人を救った海外の外交官たちに敬意を払いたい。このような行動をとった外交官は、世界20数か国、36名に上る。故・何鳳山氏もそのうちの一人で、数千人分のビザを発給し、多くのユダヤ人の命を救った。このことは、どんな苦境においても、すべてを失うリスクを覚悟の上で道徳と正義のために戦う人がいるということを証明している」と語った。
Asher Yarden代表によると、イスラエル外務省は2月上旬、故・何鳳山氏を含むこれら外交官36名の勇気ある行動を称えるため、省内の壁面に36名の氏名を刻んだプレートを設置したばかり。
イスラエル駐台北経済文化弁事処ではまた、台湾の教育部(日本の文部科学省に類似)と協力し、台湾の高校生や教員をイスラエルにあるホロコースト(大量虐殺)記念館「ヤド・ヴァシェム」に招へいし、関連の人材育成プログラムに参加させるほか、ユダヤ人大量虐殺の歴史について理解を深めてもらう事業の実施を計画している。同計画は近く始動する予定。
国家図書館ではイベント会場の外にも展示コーナーが設置され、主にナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺の歴史と、故・何鳳山氏の貢献などが紹介された。
Taiwan Today:2018年2月26日
写真提供:国家図書館公式サイト
イスラエル駐台北経済文化弁事処と徳国在台協会は25日、台湾北部・台北市の国家図書館で「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」のイベントを開催。在ウィーン中華民国総領事館(オーストリア)の総領事で、1938年から1940年にかけて、オーストリアに住むユダヤ人に数千人分にも及ぶ「命のビザ」を発給した故・何鳳山氏の功績を称えた。外交部制作のドキュメンタリー映画『東方辛徳勒-何鳳山(=東洋のシンドラー 何鳳山)』(写真)も上映された。