台湾とソロモン諸島が協力してアミ族の帆船を再現

　台湾南東部・台東県で暮らす先住民族のアミ族は本来、航海する民族だったが、100年前にそれらの帆船は忽然と姿を消した。非政府組織の台東県南島社区大学発展協会は過去2年間、東部海岸の先住民族集落における航海文化の復興に取り組む中で、これらの集落にかつて公共の道路がなかった時代、帆船は交流のため重要な役割を担っていたことを発見した。

　同協会は、アミ族が当時使用した帆船は、中華民国（台湾）の最高学術研究機関である中央研究院・歴史語言研究所の劉益昌研究員が主張する「南島玉路」で使用された古代船の形態に近いと推測したが、台東県から帆船と筏は姿を消している。「南島玉路」は、約4千年前に南海諸島間を結んだ航路に関する学説。

　台東県にある国立台東大学生命科学学科の劉烱錫教授と同県馬蘭集落連盟の羅福慶行政長は集落の長老を訪ねてヒアリングを行い、当時の帆船を実際に作って再現することを決めた。しかし帆船の製作技術の面で困難に遭遇していたところ、海洋台湾文教基金会の林黎彩董事長（理事長）がソロモン諸島のTaumako島の人たちに協力を仰ぐことを提案した。

　Taumako航海文化復興プロジェクトのリーダーである、Simon Scalopukaさんは帆船製作の専門家4人を率いて8月19日に台東県を訪問、船体の仕上げとパンダナスの葉を使った帆の製作に協力した。そして8月31日午後2時に船が完成、台東市活水湖で水面におろし、実際に動かしてみた。ソロモン諸島のJoseph Pius Waleanisia駐中華民国大使もわざわざ台東市に駆け付けて進水に立ち会った。今後数日間の実験で問題が見つからなかった場合、改めて海での航海に挑むという。

　Waleanisia大使は、こうした文化交流はソロモン諸島と中華民国（台湾）間の、オーストロネシア語族文化の兄弟姉妹としての友情と感情をいっそう固めるものである他、両国の交流はこの筏から各国に広がっていけ、文化面での協力に向けてより明確なビジョンが生まれたことを象徴すると評価した。

　台東市の馬蘭集落にはかつて帆船による大きな船隊が二つあり、主には台東市の河川、利嘉渓の河口付近に停泊していたという。約100年前、台東市ではコレラが流行した。当時の日本政府は水揚げされた魚が散らばっていることによる伝染病の発生を恐れ、船隊を解散させたという。

Taiwan Today：２０１７年９月１日

写真提供：中央社
　台湾の先住民族、アミ族はかつて航海する民族だった。台湾の非政府組織は当時の帆船の再現に取り組み、ソロモン諸島の専門家たちの協力を得てこのほど帆船（写真）を完成させた。