蔡英文・第14代中華民国(台湾)総統
家庭背景/
蔡英文総統は1956年8月31日、台北市生まれ。客家(ハッカ)や先住民族とも血縁があり、パイワン族名「Tjuku」を持つ。
蔡総統は、台湾の典型的な中小企業の家庭で育った。父親は裸一貫で事業を興し、運送業と自動車修理の会社を経営していた。こうした家庭で育ったことから、父親のプロフェッショナル、柔軟さ、粘り強さ、努力といった精神を受け継いだ。
教育背景/
蔡総統は台北市中山区で育った。台北市立中山女子高級中学(高校)を経て国立台湾大学法律学科へ進学。卒業後に渡米し、米コーネル大学で法学修士号を取得。続いてイギリスへ渡り、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで法学を主専攻、国際貿易を副専攻とし、法学博士号を取得した。
学術成果/
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス在学中、蔡総統は特に国際経済と、グローバル経済の変化がもたらす富の分配問題について専門教育を受けた。博士論文のテーマは「Unfair Trade Practices and Safeguard Actions」で、急速に変化する国際市場において、如何にしてセーフガード措置を確立するかを論じた。
政治経歴/
蔡総統は1992年から2000年まで、経済部(日本の経済産業省に相当)の国際経済組織首席法律顧問、経済部貿易調査委員会委員、『港澳条例』起草研究チームプロジェクト責任者、行政院大陸委員会諮問委員、行政院公平交易委員会委員、国家安全会議諮問委員、国家統一委員会研究委員などを歴任。
2000年から2004年は中華民国(台湾)の対中国大陸政策を担う行政院大陸委員会の主任委員(大臣に相当)や無任所大臣に相当する行政院政務委員などの重要なポストを任された。2004年に民主進歩党(略称、民進党)に入党。2005年、民進党から比例代表で立法委員(国会議員)に当選。2006年から2007年には行政院副院長(副首相に相当)、行政院消費者保護委員会(現在の行政院消費者保護処)主任委員を歴任。2007年から2008年は総統府国策顧問を務めた。
2008年の政権交代により民進党が野党に転じた後、第12代民進党主席選挙に出馬し、当選した。2010年、第13代主席に再選。2010年、新北市(台湾北部の直轄市)の市長選挙に出馬したが惜敗した。2012年には民進党公認候補として総統選挙に出馬したが落選。その後、台湾各地を訪問して民間人との交流を積極的に行った。
2014年、第15代主席に再選。2015年には第15代民進党主席のまま、民進党公認候補として総統選挙に再度出馬。2016年1月16日に中華民国第14代総統に当選した。
施政理念/
蔡総統は「イノベーション、雇用、分配」を核心とした経済発展の新モデルを提示している。産業の生産力向上と雇用機会の増加を通して、国民所得の成長につなげ、富の合理的な分配を達成することを目指している。また、政治改革の必要性も訴えており、効率の良い、団結した新たな政治体制を確立することが、新政権にとって重要な任務だと主張している。
また、完全な社会的セーフティーネットを確立するため、蔡総統は年金制度、住宅システム、食の安全、コミュニティでのケア、治安維持等の面で、様々な改革案を提示している。
蔡総統は、台湾海峡両岸関係の平和と安定の維持に尽力する考えだが、同時に「新南向政策」も打ち出しており、東南アジア諸国連合(ASEAN)や南アジア諸国とも多元的な交流を発展させたい考えである。実務的な態度で世界各国と友好を深め、世界の公民としての義務を果たしたいと考えている。